慢性炎症性脱髄性多発神経炎
(まんせいえんしょうせいだつずいせいたはつしんけいえん)
英語名略 = CIDP
僕が患っている病名で
10万人に、約1人しかいません。
1.突然の出来事
2019年5月12日朝。
目が覚めた瞬間、強烈な違和感を感じました。
首から下が全く動かず
息が苦しく
声も出ず
耳もよく聞こえない
そんな状態でした。
ただ、頭だけは元気で
「いったい何が自分の身体で起こっているのか?」
と、考える事はできました。
なんとか呼吸できるように気道を確保した後、妻を呼ぼうにも声が出ません。
身体が動かない上に声も出ない
コレが全ての始まりでした。
2.症状
『どういう病気なんですか?』
よく聞かれる質問です。
例えて話をします。
あなたが風邪をひいたとします。
風邪は、外部から“ウィルス”が侵入し、身体を攻撃する事で風邪にかかってしまいます。
ただ、当然ながら身体もウィルスに対して、抵抗をします。
それが“抗体”です。
通常であればこの抗体とウィルスが戦います。
ウィルスに負ければ風邪をひき、逆に勝てば、風邪にかからなかったり、かかっていても、治ったりするのです。
さて、僕の病気は、
この僕自身の抗体が、
何を勘違いしてか、
僕自身の身体を”敵”とみなし、僕自身を攻撃します。
本来は僕自身を守らないといけない抗体が、僕を攻撃するのです。
しかも、その攻撃対象が“神経”です。
厄介なもので、神経を攻撃されると脳からの伝達が手足に伝わらず、手足の自由が効かなくなります。
症状に個人差はありますが、
“手足のしびれが強い”
“感覚はあるが、脱力がひどい”
はたまた
“四肢の感覚が全くない”
以上のような事が身体でおこります。
とにかく
“厄介である”ということ、
また“何故そうなったのか原因が不明”とあって、国の難病に指定されています。
原因が不明だから治療方法もなく、とりあえず身体が弱くならない様に“維持療法”を行うしかない。
という病気です。
3.維持療法
維持療法は3つあります。
- グロブリン投与
- ステロイド治療
- 人工透析(じんこうとうせき)
の3つです。
人工透析は聞いたことがある!
そういう人は多いのではないでしょうか?
1日かけて自分の血を抜いて濾過(ろか)し、また自分の体に戻します。
ステロイド治療は激薬ですが、様々な症状を抑える力があります。僕もプレドニンという錠剤のステロイド薬を服用しており、毎日10㎜グラム服用しています。
『たった10㎜?』
そう思うかもしれません。
10㎜までは正直、副作用は少ないと言われていますが、長年服用すると様々な副作用を起こしやすくなります。
- 糖尿病
- 心不全
- 消化性潰瘍
- 血栓症
- 満月様顔貌
- 中心性肥満
- 動脈硬化、高脂血症
- 骨粗鬆症
などがあげられ、
一番厄介なのが
“あらゆる感染症を引き起こしやすい”
と言う事です。
免疫を抑制する。(要は抗体を抑える)力が強いため、外部からの攻撃を受けやすくなります。
先程の例で言うと、ウィルスと戦う抗体がいないのでやられっぱなしです。。。
また、個人差はありますが、
- とにかく糖質を体に取り込みやすい
- 眠れなくなる
というおまけ付きです。
最後のグロブリンによる治療。
これは僕自身がメインで行っている維持療法です。
これは、皆様の献血により頂いた”血”から、抗体だけを取り出したもので、この抗体を朝から夕方まで2日間かけて体の中に投与します。
人の抗体を大量に流し込む事で、自分自身の抗体を休ませます。
要は、自分の神経を攻撃している僕自身の抗体に、“援軍が来た”と思わせて休んでもらうのです。
僕の抗体が休んでいる間、言い換えると“皆様の献血による抗体”が僕の身体で活躍します。そしてその間は割と症状も軽くなる。
というカラクリ?です。
4.高額な医療費
このグロブリンによる治療が1番効果的と言われていますが、とにかく“高い”です。
日本に“保険”制度がなかったら、僕は毎月80万円から160万円支払いをしないと、身体が維持できなかったでしょう。
それくらい高額なもので、希少な薬なんです。
詳しくは記載しませんが、
高額医療費支給制度
や
特定疾患受給者証
による制度おかげで、負担が少なく治療する事ができています。
あと、本当に皆様の献血で、治療をさせてもらっています。
献血に行って下さる皆様、本当にありがとうございます。
5.進行はしていくのか?
これは正直わかりません。
握力だけでの話で言うと、発症当時は“右手が3で左手が6”でした。
ペットボトルの蓋はおろか、箸も、スプーンすらも持てない状況でした。
その時に比べれば全然良いですし、元々野球をやっていて、握力は55近くあったので、その遺産で生活しているような感じです。笑
ただ、去年より10近く落ちていて、15から20を行き来しています。
人によっては、
- 少しずつ症状が進行する人
- 逆にピタッと進行が止まる人(ほぼいない)
- 回復はしないけど、治療期間を延ばせるほど薬が効く人
と分かれるようです。
僕はまだ発症して日が浅いので、経過を見守りたいと思います。
6.実際はどうなのか?
僕の場合、外見はごくごく普通に見えます。
『本当は元気なんじゃないの?』
と勘違いされやすいのも事実です。
まぁ、元気な時しか他人とは会いませんからね!笑
僕の場合はとにかく手足の脱力が酷くなります。
例えると
正座を30分近く行い、足が痺れた状態で、全力で400メートル走った後を想像してください。
ちょっと非現実的かもしれませんが、”野球部出身”の僕が例え話をすると、こんな感じにしかできず・・・すみません。
まぁ、ずっと両手両足に、3キロくらいの重りをぶら下げて、日々生活しているような感じかと思います。
そしてその重りが、時として10キロに変わったりするので、
“動けない”
“動きたくない”
という感じです。
あと、回数的に少ないですが、急に身体がストーーーーンと落ちる事があります。
これはめちゃくちゃ怖いです。
なんの前触れもなくやってきます。
まぁ少し身体が疲れてるかなー?という前兆?みたいな事はありますが、落ちるまでは想像もできません。
普段は杖をついて生活していますが、この杖をついていると回避する事ができるので、今では杖自体手放せいアイテムとなりました。
ただ、コレが運転中だったら?踏切を歩いている時だったら?と考えるとゾッとします。
なので、基本的に僕は運転をしません。自分だけならまだしも、相手を巻き込みたくないからです。
最近は少し、練習がてら近くをグルグル運転しますが、人が少ない時間帯が多いです。
踏切は渡ります。
だって、歩いてコンビニに行く際の、最短ルートだからです。笑
7.ぶっちゃけ精神的には?
まぁ、正直に言うと、最初の頃は遺書的な物を病室で書こうとしました。
診断が今の病名ではなく、確実に亡くなる病気かもしれない(病名は伏せます)と言われたからです。
確率としては低かったのですが、当時3つの病名を言われ、診断がついた今の病名以外は、中々の症状でした。
僕は子供が4人います。妻も専業主婦です。
『どうやって家族を守れるのか?』
そればっかりを考えていました。
病気の事や将来のこと、いろいろな事を考えすぎて、頭が爆発しそうになった事も1回2回ではありません。
また、これは今でも月に3回くらいは見ますが、
悪夢です。
例えば、
- 運転していて足に力が入らず、ブレーキ出来ずに激突する夢
- 手足に誰かがつかまってきて、逃げる事ができず、襲われる夢(ホラー的なもの)
そして一番キツい夢が
子供がビルから落ちそうになるのを、手を取り必死になって引き上げようとするも、手の力が入らず放してしまう。
そして泣き叫びながら落ちて行く子供をずっと上から見ている夢です。
これね、本当に最悪ですよ。
病気になった頃は、ほぼ毎日こんな感じの夢を見ていました。
相当しんどかったです。
最近は見すぎて、『ああ、夢か・・・』と思うほどですが・・・笑
でも精神状態は良くありません。
薬の影響もありますが、こういう事が続くと自然と眠れなくなります。
8.価値観の変化
僕は現在身体障害者3級の手帳を持っています。
手帳を手にしてから
言い方はアレですが、福祉に対して、今まで以上にちゃんと興味を持つようになりました。
オリンピックよりパラリンピックが気になったり
車椅子の人が生活するには、とても不自由な環境が多いと思ったりです。
1点だけ例を挙げると
駅のホームはエレベーターが少なすぎて、エレベーターを探すまでの移動が多かったりします。
こういう不便さが、病気になった事で、より意識するようになりました。
会う人も変わりました。
今までは仕事関係の人がメインでしたが
同じ病気の人
また別の病気で疾患や難病を抱えている人
またその人たちを支える人たち
と話したりする事が増えたと思います。
言葉として知っていた“福祉”が、より身近になったと感じています。
僕は、“動けるほうの人間”です。
同じ病気でも
動けない人
介護者がいる人
もっと過酷な環境下で頑張って日々生活している人
がいます。
同じ病気で、気持ちもわかる。
症状は違えど、僕は動く事ができます。
だから、少しでも力になりたい。
影響力を持ってでも、自分に出来ることから初めて、変えられるところは変えていきたい。
そう思っています。
お世辞ではなく、本当に人の“縁”というものを感じながら生きています。
9.原動力!?
忘れもしません。
入院してすぐ、車椅子に乗っていた僕を
病棟の5階で景色がよく見えるところまで、看護師さんが運んでくれました。
そして外を見ている僕の耳元で
『今日、外は天気でとても気持ちいですよー』
と言われた時の
(うわっ、、、俺本当に今ヤバいかも)
という感覚。
あまり耳も聞こえず、ろれつも回らず、手足が動かずの状態で、
テレビでしか見た事ないフレーズを聞かされた瞬間。
また、
『残念ながら今の医学では治る病気ではありません』
と言われた瞬間。
そして
戒めのように、よく見る悪夢。
経験してきた最悪よりは良い状態。
少しでも恵まれているんだ。
という気持ちが原動力になっているところもありますが
1番は
この状況下で、どうやって自分が出来る事を全力でやり続けていけるか?
という事を考えながら毎日動いている事だと思います。
『立ち止まる自分を想像すると怖い』というのもありますが、逆にこうなった以上はコレを利用するくらい、前に進んでやろうと思っています。
まぁ、弱音を吐くこともあると思いますが、残された時間を大事にして、
悔いのない人生でありたいものです。